信託報酬の安いS&P500投資信託が、新NISA開始で多数誕生
2022年以前、主につみたてNISAやiDeCoで投資されていたS&P500投資信託は、「信託報酬の安さ」と「純資産額の大きさ」を兼ね揃えたeMAXIS Slim S&P500の一人勝ち状態でした。
eMAXIS Slimシリーズは、継続的に最低水準の信託報酬に修正するとしており、実際にSBI・V・S&P500が信託報酬最安値(当時)で新規設定された時には、即座に信託報酬を値下げして最低水準の座を奪い返すなど、低コストのインデックスファンドとして絶対的な地位を築いていました。
しかし、新NISA開始前年の2023年に、信託報酬が安いS&P500投資信託が次々と設定されました。
S&P500という同じ指数に連動する投資信託であれば、信託報酬の低いインデックスファンドを選択するというのがセオリーです。
新NISAやiDeCoのような長期保有(時間・運用益が大きくなるため、信託報酬の影響も大きい)を前提とする投資であれば、なおのことです。
信託報酬の安い楽天・S&P500などの後発ファンドを含めた最良の選択肢を求めて銘柄比較を実施することにしました。
S&P500投資信託の比較
S&P500投資信託のうち、信託報酬が0.1%以下に設定されているファンドを対象に比較を行いました。
2025年8月時点における、S&P500投資信託の信託報酬や純資産額等は表のとおりです。
| ファンド (運用会社) | 購入可能な ネット証券 | 信託報酬 | 純資産額 (百万円) | 運用年数 |
| eMAXIS Slim S&P500 (三菱UFJ) | SBI、楽天、 マネックス、 auカブコム等 | 0.0814% | 8,092,137 | 7年 |
| SBI・V・S&P500 (SBI) | SBI、マネックス、 auカブコム等 | 0.0938% | 2,240,037 | 5年 |
| たわらノーロード S&P500 (アセマネOne) | SBI、楽天、 マネックス、 auカブコム等 | 0.09372% | 145,188 | 2年 |
| はじめてのNISA・S&P500 (野村) | SBI、マネックス、 auカブコム等 | 0.09372% | 72,688 | 2年 |
| 楽天・S&P500 (楽天) | 楽天 | 0.077% | 649,620 | 1年 |
※ 上から運用年数(設定日)順に記載
eMAXIS Slim S&P500の信託報酬引き下げ(2025.1)により、純資産が他を圧倒
2025年1月、eMAXIS Slim S&P500は信託報酬を0.09372%→0.0814%へ引き下げました。
これに伴い、eMAXIS Slim S&P500への資金流入が加速し、圧倒的な純資産額になりました。
信託報酬の安さでは楽天・S&P500が優れていますが、純資産額や運用年数等のブランド力、そして購入可能なのが楽天証券だけであることが、資金流入の差(S&P500投資信託の資金流入で、1位:eMAXIS Slim S&P500、2位:楽天・S&P500)に表れているのでしょう。
信託報酬の引き下げ競争の限界値はどのくらいなのでしょうか。
本家米国のS&P500ETFでは、純資産額が最大のSPY(ステートストリート社)の経費率が0.09%であり、eMAXIS Slim S&P500と楽天・S&P500の信託報酬は既にこれより安くなっています。
経費率が最安のVOO(バンガード社)の経費率は0.03%です。おそらく、このあたりがファンド運営が成立する限界値のように思えます。
楽天・S&P500の信託報酬は0.077%で、それに加えて、投信残高ポイントプログラムにより0.028%のポイントが還元されます。つまり、実質的なコストは0.077% - 0.028% = 0.049%で、VOOに迫る水準ですね。
世界最高水準の低コストである日本のS&P500投資信託は、特に新NISAやiDeCoのような長期運用には魅力的な投資先ですね。
