新NISAの成長投資枠に日本高配当ETF
新NISAでは、つみたて投信枠でeMAXIS slim S&P500、成長投資枠で日米の高配当ETFを購入する計画です。
定年退職後の資産運用というステージですので、これから増やすのではなく、年金を補う収入源として、投資信託については4%の定率取崩し、高配当ETFには4%の分配金を期待しています。
2021年冬~2023年夏にかけて、退職金運用の事前検証をおこなってきましたが、私は当初思っていたよりも下落局面におけるメンタル耐性が弱く、2022年の下落相場に驚いてしまいました。
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その結果、元々計画していた「全額、投資信託の4%の定率取崩し」という資産運用に自信がなくなり、下落時に売るという怖い行為を必要としない高配当ETFをポートフォリオに組み入れるよう計画変更しました。
さらに、新NISA制度が明らかになったことをきっかけに、日米の高配当ETFを新NISA口座で運用した場合の米国課税影響度を計算してみました。
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計算を通じて、「米国10%課税の影響は大きく、米国高配当ETFに経費率の差で劣っていた日本高配当ETFも十分選択肢」ということがわかりました。
高配当ETFといえば圧倒的に耳にすることが多いVYM、HDV、SPYDといった銘柄は新NISAであっても米国課税されるので、さすがに非課税の日本高配当ETF相手に優位性を保てなくなるのです。
PFFD、JEPI、QYLDといった毎月分配銘柄は新NISAの対象外ですし、特定口座で運用するとなれば日本課税もされるのでさらに税金に持っていかれます。
このようなことから、新NISAの成長投資枠に日本高配当ETFを組み入れることにしたのですが、投資信託や米国高配当ETFの有名どころに比べるとどうしても銘柄に詳しくなかったので、今回あらためて調べてみました。
日本高配当ETFの銘柄比較
日本高配当ETFは多数ありますが、利回り4%以上のポートフォリオを作成するため、「利回りー経費率」が4%以上の銘柄、加えて4%未満でも増配率を考慮して近い将来4%が見込める銘柄に絞り込みました。
もちろん、タコ足配当(元本を減らしながら無理矢理分配金を出すこと)になっては困るので株価上昇率が右肩上がりであることも条件としました。
コード | 名称 | 利回りー経費率 | 5年平均増配率 | 5年平均株価上昇率 | 保有上位銘柄(%) | 特徴 |
1478 | iシェアーズ MSCIジャパン 高配当ETF | 2.31-0.21=2.10% | 9.87% | 24.66% | 【37銘柄】本田技研(5.5)、東京海上(5.4)、伊 藤忠(5.0)、三井物産(5.0)、トヨタ(4.9)、ソフト バンク(4.9)、JT(4.8)、三菱電機(4.8)、 NTT(4.6)、任天堂(4.5) | 配当性向や配当継続性、財務指標の要件を満た した銘柄の中で、配当利回りが高い銘柄で構成 される指数「MSCIジャパン高配当利回りイン デックス」との連動を目指すETF |
1489 | NF日経 高配当50 | 5.24-0.31=4.93% | 18.92% | 29.10% | 【50銘柄】三井住友(3.6)、商船三井(3.6)、みず ほ(3.6)、ソフトバンク(3.5)、武田薬品(3.4)、 JT(3.4)、日本郵政(3.4)、日本郵船(3.4)、日本製 鉄(3.3)、JFE(3.2) | 日経平均株価の構成銘柄のうち、予想配当利回 りの高い原則50銘柄で構成される株価指数。 予想配当利回り及び流動性を加味したウエート を用いる。 |
1494 | One高配当 日本株 | 3.42-0.31=3.11% | 48.59% | 24.31% | 【40~50銘柄】電源開発(3.5)、夢真ビーネッ クス(3.3)、住友大阪セメント(3.0)、ENEOS (3.0)、NTT(2.9) | TOPIXの構成銘柄のうち、10年以上毎年増配 しているか、安定した配当を維持している40 ~50銘柄を対象とした株価指数「S&P/JPX 配当貴族指数」との連動を目指すETF |
1577 | NF 日本株 高配当70 | 4.03-0.35=3.68% | 10.73% | 12.05% | 【70銘柄】INPEX(1.9)、東京海上(1.8)、 KDDI(1.7)、東京建物(1.7)、双日(1.7)、キャノ ン(1.7)、三井物産(1.7)、NTT(1.7)、りそな (1.7)、野村不動産(1.7) | 国内⾦融商品取引所に上場する全ての普通株式 のうち、今期予想配当利回りの⾼い、原則 70 銘柄で構成される等⾦額型の指数である「野村 ⽇本株⾼配当70指数」との連動を⽬指すETF |
1651 | 大和TOPIX 高配当40 | 2.86-0.21=2.65% | 26.68% | 33.92% | 【40銘柄】三菱商事(5.8)、トヨタ(5.4)、三菱 UFJ(5.0)、伊藤忠(4.8)、NTT(4.8) | TOPIX構成銘柄のうち、配当利回りが相対的 に高い40銘柄により構成される「TOPIX高配 当40指数」との連動を目指すETF |
2564 | グローバルX スーパーディ ビィデンド 日本株式 | 4.66-0.43=4.23% | (5年未満) | (5年未満) | 【25銘柄】トランス・コスモス(4.6)、稲畑産 業(4.3)、東洋製罐(4.2)、商船三井(4.2)、日 本郵船(4.1)、日本特殊陶業(4.1)、菱洋エレク トロ(4.0)、NSユナイテッド海運(4.0)、三井 住友(4.0)、GMOフィナンシャル(4.0) | 1478と同じ「MSCIジャパン高配当利回りイ ンデックス」から各セクターの上限数を決め て、配当利回りの高い25銘柄を選定し、等ウ ェイト(1銘柄あたり4%)でポートフォリオ を構成 |
(参考)VYM | 3.12-0.06=2.96%※ | 6.29% | 24.80% | (省略) | ||
(参考)HDV | 3.86-0.08=3.78%※ | 4.81% | 14.07% | |||
(参考)SPYD | 4.54-0.07=4.47%※ | 7.62% | -1.82% |
※米国税抜で計算(実際はここからさらに10%課税される)
「1489」と「2564」を選択
銘柄比較の結果、「利回りー経費率」が4%以上という条件を満足する「1489」と「2564」を選択することにしました。
1489は5年平均増配率・株価上昇率とも右肩上がりです。
2564は新しいETFなのでデータがありませんが、同じ指数を用いている1478の5年平均増配率・株価上昇率が堅調なので、大丈夫と判断しました。
次点として、1494と1577は引き続きチェックし、成長投資枠を年上限額で投資していく中で、データの少ない2564が思わぬ不調を示したならば、途中からでも投資先を次点の銘柄に安心して変更できるよう準備しておきます。
特に1494の増配率は魅力的で、1489とは構成銘柄の重複も少なく、良い組み合わせかもしれません。
日本高配当ETFのデメリットとして、経費率の高さやタコ足配当が指摘されることがあります。
タコ足配当については、表のとおり米国高配当ETFに比して5年平均では劣ることはありません。
もっと長期だとわかりませんが、少なくとも直近5年ではむしろ米国高配当ETFの方が低パフォーマンスのようです。
経費率の高さについては、米国高配当ETFとの比較、日本個別株との比較の両方があります。
このうち、米国高配当ETFとの比較については、過去記事及び表のとおり、むしろ新NISAで日本税のみ非課税となったので、計算上は日本高配当ETFが有利になります。
日本個別株との比較では、もちろん経費率が発生しない個別株が有利です。
条件によっては、株主優待も期待できます。
私も、投資余力があれば成長投資枠のサテライトとして少し個別株を交えてみるかもしれません。
しかし、成長投資枠のメインで個別株を運用する考えはありません。
「日本高配当ETFは自作しよう」とよくいわれます。
退職金運用の事前検証として特定口座でやってみたのですが、私にとってはそんなに簡単な事ではありませんでした。
手間暇はもとより、その都度値動きに目が行ってしまって、特に下落局面においてはメンタルが持たなかったのです。
退職金運用の事前検証の結果、投資信託の定率取崩しでは下落局面でメンタルが持たないから、高配当ETF投資に切り替えて「鶏に手をつけず金の卵だけいただこう」という戦略に変更した経緯があります。
もし、自ら個別株を売買して元気な鶏の選別できるメンタル耐性があるのなら、投資信託の定率取崩しで良かったのではと思考が先祖返りしてしまったのです。
素人が資産運用する「ほったらかし投資」であることがとても大切であることを再認識し、計算上は自作が正しくても、心穏やかな老後のためには高配当ETFが安心だなと思うのです。
若い時は理、老いては情ということでしょうか。年相応の戦略を選びたいと思います。