資産運用

年金を60歳から繰り上げ受給する理由とは?|新NISAも活用!

2024年2月19日

年金を60歳から繰り上げ受給する理由とは?|新NISAも活用!

公的年金を何歳から受給するか検討しました

公的年金の受給開始年齢は原則として65歳からですが、繰り上げ受給(60~64歳で受給開始すること)や繰り下げ受給(66~75歳で受給開始すること)も可能です。

繰り上げ受給の場合、「繰り上げた月数×0.4%」が年金額から減算されます。

繰り下げ受給の場合、「繰り下げた月数×0.7%」が年金額に加算されます。

これらの減算や加算は、生涯にわたって年金額に適用されます。

まさに人生の一大決心ですので、何歳から年金受給するか悩むところです。

お金が必要な時期はいつかを明確にするため、60歳以降の支出と収入を分析してみました。

60歳以降の収支バランス

60歳以降の支出

60歳以降の支出項目と増減傾向の一例を表にまとめました。

支出項目増減傾向
生活費・子が独立するまでは高止まり
・子の独立により大幅減少(夫婦2人生活へシフト)
娯楽費(旅行、趣味等)加齢により年々減少傾向
社会保険料65歳以降減少
公共料金等65歳以降減少

表のとおり、60代前半が支出のピークであり、その後は減少する傾向にあります。

支出項目には含めていませんが、他にも住宅ローン等の返済が残っている場合は、当初高止まり&完済後はゼロとなるため、支出の年々減少傾向が一層強くなると想定されます。

60歳以降の収入

60歳以降の収入項目と増減傾向の一例を表にまとめました。

収入項目増減傾向
利子所得(生活防衛資金の預金等)一定額
配当所得(株の配当金等)年々増加(増配)
給与所得(定年後の再雇用等)一定額(在職間)
事業所得(在宅ワーク等)年々増加(事業成長)
退職所得(退職金やiDeCo等)臨機
譲渡所得(投資信託の売却益等)臨機
雑所得(公的年金や年金保険等)一定額(受給開始後)

表のとおり、定年退職等によって60代前半は収入が落ち込みますが、資産運用等によって年々増加する傾向にあります。

iDeCoや新NISAで運用した投資信託等の売却益についても、後年になるほど運用期間を長くとれるため資産増加が期待できます。

さらに相続等あれば、それ以降は資産運用規模が拡大するため、収入の年々増加傾向が一層強くなると想定されます。

収支バランスが最も厳しくなるのは60代前半

収支バランスは個人差が大きく、長期間に及ぶと政治経済状況にも左右されることから正確に見積もることは困難です。

一つの想定として、支出や収入の前提を上記のように仮定したならば、60歳以降の支出は右肩下がり、収入は右肩上がりであることから、収支バランスが最も厳しくなるのは60代前半ということになると考えられます。

受給年齢が遅くなる繰り下げ受給のリスク

インフレで実質受給額の減少

日本は長らくデフレが続いていましたが、コロナ後からはインフレが始まりました。

もともと、日本は2%程度のインフレ率を目標としていたので、今後もインフレ経済は継続するものと考えられます。

インフレ経済においては、円の価値が時間経過とともに減少していきます。

今年受給する10万円と5年後に受給する10万円では、今年の10万円の方が価値が高いのです。

年金を繰り上げ受給すると月数×0.4%減額されますが、もし政府が年金支給額をインフレ率に応じてちゃんと増額してくれなければ、繰り上げ受給して個人でインフレ対策する必要があるでしょう。

インフレ時代の資産防衛|円安相場の攻略法・インフレに強い資産とは
キャピタルフライト|新NISAの米国投資で進む円安インフレ対策5選

Contents日米の金利差に起因するインフレの危機キャピタルフライトに起因するインフレの危機円安・インフレへの対策5選①外貨預金・外貨建てMMFの保有②米国株式の保有③物価連動債券(インフレ連動債券 ...

続きを見る

投資機会損失

つみたて投資などにおいては、早く始めないと投資機会の損失につながるという言葉を耳にすることがあると思います。

米国の株価指数S&P500は、導入された1957年以来、平均で約10.7%/年の利回りを記録しています。

1年あたりの単利だけではなく、複数年の複利効果まで考えると、早めに始めていたら得られたはずの運用益を大幅に損失してしまうのです。

繰り返しになりますが、年金を繰り上げ受給すると0.4%/月の減額、つまり4.8%/年の減額となります。

投資に絶対は無いですが、過去70年間と同様に世界経済が成長し続けるならば、繰り上げ受給することが単純に減額と言えるのか、一考の余地はあると思います。

投資の利回りに期待することにはリスクがありますが、最後のベビーブーム世代である団塊ジュニア世代の年金システムの維持運営は苦しいでしょうから、今は約束されている繰り下げ受給による増額に期待することにもリスクが無いとは言い切れません。

死亡リスク

人生100年時代と言われますが、そのような保証はありません。

いろんな場面で都合よくこの数字が使われてるケースも散見されます。

年金の繰り下げ受給などはその最たるものではないでしょうか。

受給開始年齢の検討にあたっては、長生きリスクだけではなく、死亡リスクも想定しておきましょう。

例えば死亡して年金貯蓄を配偶者や子に相続する場合、生きているうちに受け取っていない年金が死亡後に追給されることはありませんから、繰り上げ繰り下げによる何%増減を論ずるより、確かな現金を早期にもらうことが死亡リスク対策です。

もし60代の支出が少なく長生きした場合は、繰上受給による減額を後悔する?|新NISAを活用しよう!

想定外に60代の収支バランスが安定していて、長生きして老後に他人より年金が少ないことを後悔する。

これが、60歳繰り上げ受給の最悪シナリオだと思います。

しかし、この問題も新NISA制度を活用することで対策できます。

60歳から受給したものの、収支バランス良好であれば、年金は新NISAで運用しましょう。

例えば、65歳で通常受給した場合の年金年額を、計算の便宜上、100万円とします。

60歳で繰り上げ受給した場合は24%減額されるので、76万円となります。

これを新NISAのインデックス投資で年利4%運用すると、64歳までに元利合わせて420万円になります。

そして、65歳以降はこの420万円を元手に年24万円(月2万円)の定額取崩しを開始するのです。

これにより、65歳で通常受給した人と同様、年100万円のキャッシュフローが得られます。

元手とした420万円は年利4%で運用され続けるので、30年1ヶ月、95歳まで持ちます。

加えて、いざとなれば取り崩せる資産が、国ではなく自分の証券口座にあるのは安心ですね。

もちろん、収支バランスに余裕がある時には取崩しを停止して、資産を長持ちさせるのも良いでしょう。

公的年金は60歳から繰り上げ受給するのが最適

60歳に繰り上げて受給することのデメリットとして、生涯にわたって公的年金受給額が減額されることが挙げられます。

しかし、収入と支出のトータルで考えると、最も支出が多い時期に得られる収入にこそ価値があるのです。

逆に繰り下げ受給して年金増額しても、高所得高齢者として扱われてしまい、税金や社会保険料が多くなる可能性があります。

もうひとつ、繰り上げ受給のデメリットとして挙げられるのが、寡婦年金の受給ができなくなることです。

寡婦年金とは、夫が亡くなったときに、その妻が60~65歳の間に支給される年金です。

しかし、このようなケースでは一般的に死亡保険金があるはずです。

住宅ローンが残っていたとしても契約者死亡ということで団体信用生命保険(団信)によりゼロになります。

妻一人となるので支出も半減とはいかないまでも、大幅に減少すると考えられます。

一方、ここ数年の政府の動きを見る限り、65歳まで待つ、あるいは繰り下げをしている間に、年金制度が改正(改悪)される可能性も否定できず、その前に確かな現金を確保しておいた方が良いという考え方もあります。

改正で税率なんか上げられたら、それこそ頑張って繰り下げ受給して年金増額を勝ち取った分が、そのまま税金で奪われますからね。

逆に繰り上げで減額受給していたため税金が少なくて済んだとかいう、そんな皮肉があるかもしれません。

何より、相対的に若くて気力があり健康なうちに、お金を使って人生を楽しみたいというのが自然ではないでしょうか。

これまでの人生を振り返っても、やはり若いうちにもっと楽しんでおきたかったと思います。

以上のように、最もお金が必要であり、加えて死亡リスク等の考慮事項の観点からも、公的年金は60歳から受給するのが最適ではないかと考えます。

-資産運用