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iDeCoの受け取り方と税金|早期退職した場合の退職所得控除は?

iDeCoの受け取り方|50代で早期退職した場合の最適な節税方法

iDeCoの受給方法と所得控除

iDeCoの受給方法には、一時金と年金の2方式があります。

また、一時金と年金では、税金が異なります。

一時金の場合、「退職所得」扱いとなり「退職所得控除」が適用されます。

計算式は次のとおりです。

  • 退職所得控除額=800万円+70万円×(勤務年数-20年)
  • 退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

年金の場合、「雑所得」扱いとなり「公的年金等控除」が適用されます。

年齢や所得により控除額が異なります。

公的年金などの雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合は、次のとおりです。

  • 65歳未満:公的年金等控除額=最低年60万円
  • 65歳以上:公的年金等控除額=最低年110万円

 

控除制度がiDeCoと重複する所得(退職金、公的年金など)に注意

退職所得控除と公的年金等控除を比較すると、白紙的には「控除額が大きく」かつ「課税所得が1/2として計上」される退職所得控除の方が有利です。

しかし、それぞれの控除枠をiDeCoが専有できるわけではありません。

したがって、関連する所得(退職金、あるいは公的年金等)の状況によっては、必ずしも退職所得控除が有利とは限らないのです。

一時金受給を選択した場合の注意点

一時金を選択して、退職控除を受ける場合、退職金の「受給時期」が重要になります。

退職金とiDeCoが退職所得控除枠を重複使用してしまうと、控除上限をはみ出してしまって税金が過大になるリスクがあります。

重複使用を避けるためには、iDeCoを先に受給し退職金を5年後にもらうか、退職金を先に受給しiDeCoを20年後にもらうしかありません。

iDeCo受給は60歳からなので、40歳以前に退職して、退職金とiDeCoのインターバルを開ける必要があります。

年金受給を選択した場合の注意点

年金を選択して、公的年金等控除を受ける場合、「公的年金等の雑所得」と「公的年金等以外の雑所得」が重要になります。

  • 公的年金等の雑所得   : 公的年金、国民年金基金、iDeCo等
  • 公的年金等以外の雑所得 : 個人年金保険、講演料、作家以外の原稿料、宅配などの報酬等

どちらも所得が多いほど、公的年金等控除額は少なくなります。

公的年金等以外の雑所得が1,000万円以下の場合は、下表のようになります。

受給者の年齢公的年金等の雑所得公的年金等控除額
65歳未満130万円未満60万円
130万円以上
410万円未満
年金額×25%
+275,000円
410万円以上
770万円未満
年金額×15%
+685,000円
770万円以上
1000万円未満
年金額×5%
+1,455,000円
1000万円以上1,955,000円
65歳以上130万円未満110万円
130万円以上
410万円未満
年金額×25%
+275,000円
410万円以上
770万円未満
年金額×15%
+685,000円
770万円以上
1000万円未満
年金額×5%
+1,455,000円
1000万円以上1,955,000円

早期退職して退職金受給した場合のiDeCo受給方法

iDeCoは白紙的には一時金受給で退職所得控除の節税効果を活用するのが良いのですが、私のように早期退職、つまりiDeCo受給前に退職金受給する人にとってはその限りではありません。

まず、会社退職金とiDeCo受給金の合計額に退職所得控除が適用されてしまいます。

もし会社退職金が退職所得控除の大半を占めてしまうならば、iDeCoは退職所得控除をほとんど受けられないことになります。

こうなると、白紙的には控除が少なかった年金受給も選択肢に入ってきます。

例えば公的年金を65歳以上で受給するならば、iDeCoは65歳未満において年60万円まで非課税で受給することができます。

したがって、早期退職して先に退職金受給した場合のiDeCo受給には、以下のような節税方法が考えられます。

退職金とiDeCoの合計額が退職所得控除より少ない場合

iDeCo受給可能年齢である60~75歳の間に、iDeCoを一時金受給すると、退職所得控除に余裕がある(会社退職金が少ないため、控除枠を使い切れなかった)ため全額非課税となります。

なお、受給を遅らせるとiDeCoの維持管理費が積み上がります。

したがって、60歳頃が顕著な下落相場でない限りは、早めに受給した方がいいかもしれません。

退職金とiDeCoの合計額が退職所得控除より多い場合

これは種々のパラメータが絡むので、一例を紹介します

  • 55歳  :退職金受給(「退職金>退職所得控除」ならば全額非課税)
  • 60~64歳:iDeCo年金受給(年60万円まで非課税)
  • 65歳  :iDeCo残金を一時金受給(「退職所得控除の余力 > iDeCo残金」ならば全額非課税)

公的年金の受給額によっては、65歳以降もiDeCo年金受給を継続した方が有利な場合があります。

退職金も公的年金も多く、いずれの控除もiDeCoに使えない場合

退職金も公的年金も多い方は、控除は無いですが、課税所得が1/2として計上される退職所得のメリットを活かして、一時金受給するのも良いでしょう。

iDeCoを有利に受け取るため最新の制度改正を確認しましょう

iDeCoは頻繁に制度改正されます。

本記事でとりあげたiDeCoと退職金の受給インターバルが14年間から19年間に改悪されたのは2022年4月ですし、2023年の税制調査会では退職所得控除が検討されているというニュースもあります。

「サラリーマンを狙い撃ちとした増税はしない」とのことでしたが、はっきりと「退職金増税はしない」と約束されてはいませんし、本記事の受給インターバル延長のように「それは増税ではない」という改悪があるかもしれません。

iDeCo改正の最新動向を把握して、最適な受給方法のメンテナンスを継続しましょう。

iDeCo改正の最新動向

加入年齢上限を5年延長して70歳未満に引き上げ

日経新聞(2024年3月24日)の記事で、厚生労働省はiDeCoに掛け金を出せる期間を、現状の65歳未満から70歳未満に引き上げる方針が報道されました。

65~69歳で働く人は2023年に52%に達しており、働きながら長く積み立てれば、将来の年金が増えやすくなるという事だそうです。

70歳まで労働者ですか・・・健康と寿命に自信があり、お金だけが不安という方には、朗報かもしれませんね。

私は、自分の健康寿命は70代までと想定し、人生の最後の20年くらいは、社畜から解放され学生時代のように悠々自適な生き方をしたいと希求し、50代で早期退職しましたので、ちょっと人生観が違う感じですね。

とはいえ、ライフスタイルは様々ですから、65~69歳でもiDeCoによる所得控除が得られる選択肢が増えたことは、良い改正だと思います。

掛け金の上限額引き上げ

2024年12月から公務員等の掛け金上限額が、現在の1.2万円から2万円に引き上げられます。

今後も、掛け金の上限額引き上げが検討されるとのことです。

下限額の5千円は変わらずに上限額が引き上げられることは、掛け金の選択肢が増える良い改正ですね。

受給開始年齢の引き上げ

iDeCoの受給開始年齢は、現在60歳です。

これが引き上げられるとなれば、大問題ですね。

しかし、公的年金の支給開始年齢の引き上げが検討されている中、同じ年金という位置づけのiDeCoの支給開始年齢が引き上げる検討が始まることは、不思議ではありません。

不思議ではありませんが、大問題であることに変わりはありません。

国が責任を持って個人の健康寿命を引き上げてくれるというならともかく、健康寿命はそのままに受給開始年齢が引き上げられては、お金を使うことができる時間が純粋に減ることを意味します。

iDeCoのデメリットとされる60歳までの資金拘束、このゴールポストを一度でも少しでも引き上げた前例ができてしまっては、所得控除のメリットを資金拘束のデメリットが圧倒してしまい、iDeCoの活用は低調になっていくと思います。

ライフスタイルの多様性に対応するため選択肢を増やす改正は良いと思いますが、受給開始年齢引き上げのように選択肢を減らすのは改悪ですので、検討するならばむしろ引き下げにして欲しいところです。

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