資産運用

【新NISA】eMAXIS Slimと楽天S&P500を徹底比較

2024年2月10日

【新NISA】eMAXIS Slimと楽天S&P500を徹底比較

つみたてNISA:eMAXIS Slim S&P500、新NISA:楽天S&P500

2023年末に新NISAの投資方針を検討した結果、つみたて投信枠ではS&P500投資信託、成長投資枠で日本高配当ETF・米国高配当ETF・ADR銘柄を購入することにしました。

新NISAの投資戦略|S&P500投資信託と日米高配当ETFの組合せ
新NISAの投資戦略|S&P500投資信託と日米高配当ETFの組合せ

Contents投資目的と投資方針つみたて投信枠ではS&P500投資信託修正:投資先をeMAXIS Slim S&P500から楽天・S&P500へ変更成長投資枠では日米の高配当 ...

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このうち、S&P500投資信託については、楽天・S&P500で新NISAつみたて投信枠への投資を開始しました。

私はもともと、つみたてNISAでは、「信託報酬の低さ」「純資産額の大きさ」から判断して、eMAXIS Slim S&P500に投資していました。

eMAXIS Slimシリーズは、継続的に最低水準の信託報酬に修正してくれるので、安心して長期保有していたのです。

しかし、2023年後半にeMAXIS Slim S&P500より信託報酬が安いS&P500投資信託が次々と設定されたのですが、今までのところ業界最低水準への修正はなされていません。

2024年1月分の新NISA設定最終日まで、「eMAXIS Slim S&P500の信託報酬値下げ!」というニュースが来ることを待ち続けましたが、待ち人来たらず。

信託報酬の値下げ競争がこのまま終わって欲しくないという願いも込めて、楽天・S&P500で新NISAつみたて投信枠をスタートすることになりました。

つみたてNISAと新NISAで異なる銘柄となりましたが、同じ指数であれば、信託報酬の低いインデックスファンドを選択するというポリシーを優先しました。

eMAXIS Slim S&P500が信託報酬を下げなかった理由を考察

2023年前半までは、eMAXIS Slim S&P500は業界最安値の信託報酬を維持すべく、安い競合ファンドが設定される都度に信託報酬を下げてきました。

それが新NISA開始直前の2023年後半になって、eMAXIS Slim S&P500が信託報酬を下げなかった理由を、私なりに考えてみたのですが、

① 現在の0.09372%がS&P500投資信託の信託報酬限界値であり、これ以上安くすると安定したファンド運営ができず、むしろ後発ファンドが無理な設定をしている(そうであれば、いずれ隠れコストで判明する)

② 現在の信託報酬でも後発ファンドより資金流入が多い地位を確保しており、ファンドの利益を犠牲にしてまで信託報酬を下げる必要が無い(純資産額が桁違いに大きいファンドだけに、わずかなコスト低減でも大きな利益減となってしまう)

③ もうしばらく様子を見てから判断(積極的に低コスト化を牽引するのではなく、競合ファンドがeMAXIS Slim S&P500への資金流入を脅かす存在になった時に限り低コスト修正する)

思いつくのはこの3つくらいでした。

「①」であるか否かは、後発ファンドが設定後1年程度経過して隠れコストが計算できるようになれば、明らかになります。

信託報酬と隠れコストを合計すると、後発ファンドよりeMAXIS Slim S&P500の方が低コストだったとなれば、理由は「①」と言えるでしょう。

もし隠れコストが大きくなかったという結果になれば、理由は「②」か「③」なのかなと思います。

しかし、「②」はもちろんのこと、「③」であったとしても、ちょっと残念です。

4~5年前のeMAXIS Slim S&P500は、楽天VTIやSBI・V・S&P500と信託報酬を競っていて、業界最安値で競争を勝ち抜きました。

現在のeMAXIS Slim S&P500は、S&P500ファンドの絶対的王者に君臨してしまったがゆえに、業界最安値は追求せず、圧倒的な純資産額とブランド力で勝負するスタンスに変わってしまったのでしょうか。

実は本場米国において、このような前例があるのです。

米国のS&P500ETF、日本ではバンガード社のVOOが有名ですが、VOOは後発ETFであり、本家本元のS&P500ETFはステートストリート社のSPYです。

SPYの経費率が0.09%で、当時としては安い経費率で人気を博し、長い歴史の中で莫大な純資産額を積み上げてきました。

後発ETFのVOOが経費率0.03%と破格の低コストで設定されても、SPYは老舗のブランド力で純資産額1位のまま経費率を下げることなく現在に至っています。

もちろん、純資産額の大きさに応じて指数の使用料が異なるのですが、今となってはもうVOOの純資産額も十分に大きいですからね・・・

  • SPY = eMAXIS Slim S&P500
  • VOO = 楽天・S&P500

もし米国の前例が当てはまるのならば、日本のS&P500ファンドの信託報酬が、このまま固定化されてしまう可能性も否定できません。

S&P500投資信託の比較(2024.2)

新NISAは開始しましたが、S&P500投資信託の比較は継続します。

長期投資の観点から、各ファンドへの資金流入を反映した純資産額の伸び率は確認した方が良いと思ったからです。

eMAXIS Slim S&P500の信託報酬はこのまま0.09372%で固定化されてしまうのか、楽天・S&P500等の隠れコストはどの程度か、といったところも気になります。

S&P500投資信託のうち、信託報酬が0.1%以下に設定されているファンドを表にまとめました。

ファンド
(運用会社)
購入可能な
ネット証券
信託報酬純資産額
(百万円)
運用年数
eMAXIS Slim S&P500
(三菱UFJ)
SBI、楽天、
マネックス、
auカブコム等
0.09372%3,566,5855年
SBI・V・S&P500
(SBI)
SBI、マネックス、
auカブコム等
0.0938%1,382,1264年
たわらノーロード S&P500
(アセマネOne)
SBI、楽天、
マネックス、
auカブコム等
0.09372%11,0490年
はじめてのNISA・S&P500
(野村)
SBI、マネックス、
auカブコム等
0.09372%2,9470年
楽天・S&P500
(楽天)
楽天0.077%76,4390年
つみたてS&P500
(ブラックロック)
マネックス0.0586%1,1660年 

※ 上から運用年数(設定日)順に記載

楽天・S&P500:iDeCo対象商品となり資金流入が加速

新NISA開始以降、楽天・S&P500への資金流入が加速し、後発S&P500ファンドの中では圧倒的な純資産額になりました。

さらに2024年1月26日から、楽天・S&P500がiDeCo対象商品に追加されました。

楽天S&P500と楽天オルカンはiDeCo対象商品に追加されるか
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これにより、後発S&P500ファンドの弱点である純資産額の少なさが、楽天・S&P500に関しては解決されていくと思います。

理由は、楽天証券iDeCoにおいて、指数は違いますが同じ米国株ファンドである楽天VTIから楽天・S&P500へのスイッチングが予想されるからです。

楽天VTIはもちろん人気の高いファンドなのですが、いかんせん信託報酬が割高(設定当時は安かったのですが)なので、楽天・S&P500へのスイッチングが加速するでしょう。

iDeCoは、スイッチングの操作が簡単なのも追い風ですね。

そうなると、純資産額をめぐる状況はどうなるか。

上記の表のように、現在のS&P500ファンドの純資産額ランキング上位3銘柄は、

  1. eMAXIS Slim S&P500:3,566,585百万円(運用年数5年)
  2. SBI・V・S&P500:1,382,126百万円(運用年数4年)
  3. 楽天・S&P500:76,439百万円(運用年数0年)

となっています。

運用年数の差が大きいので、1位と2位が突出してる状況です。

さて、楽天VTIは人気ファンドであり運用年数も長いため、純資産額は1,335,849百万円と、ちょうどSBI・V・S&P500と同等の規模を有しています。

この金額を単純に3位の楽天・S&P500と合計すると、仮定の純資産額は1,412,288百万円となり、ランキングの順位が入れ替わります。

  1. eMAXIS Slim S&P500:3,566,585百万円(運用年数5年)
  2. 楽天・S&P500:1,412,288百万円(運用年数0年)
  3. SBI・V・S&P500:1,382,126百万円(運用年数4年)

もちろん、楽天VTIの全てが楽天・S&P500にスイッチングされるわけではありませんし、逆に他のファンド(先進国株式等)から楽天・S&P500にスイッチングしてくる分もあるでしょうから、現時点ではこの数字が多いとも少ないとも言い切れません。

ただ、上位2銘柄と競うレベルまで純資産額を増やせたなら、隠れコストも相当に抑制できるでしょうし、単独首位の信託報酬率と相まって、楽天・S&P500はSPYに対するVOOのような存在になるかもしれません。

しかし、改良して欲しい点もあります。

それは、現在は楽天証券でしか取り扱いが無いことです。

もちろん、このファンド設定の当初目的が、新NISA開始に伴う楽天証券(楽天経済圏)ユーザーの確保・増加にあったことは、それで良いと思います。

しかし、2024年2月となり、新NISAが開始して2か月近く経過しました。

NISAは1度でも取引があると、その年は証券会社変更はできないため、当初目的はある程度達成されたのではないでしょうか。

次は、楽天・S&P500のファンド規模拡大に注力して、ファンド投資家への還元(隠れコスト抑制、トラッキング精度向上、さらなるコスト低減)に挑戦して欲しいと思います。

そのためには純資産額の早期増加が必須であり、iDeCo追加の勢いそのままに、他の証券会社での取り扱いを実現して欲しいです。

最大のライバルであるSBI証券での販売が難しいのなら、2024年1月にdocomoと業務連携したマネックス証券も良いでしょう。

8月にはdカード積立投資が開始するという報道もありましたし、年途中からの新規買付余力も大きそうです。

eMAXIS Slim S&P500:非上場投資信託とは思えない圧倒的な純資産額

新NISAが始まって2か月ほど、ここまでの資金流入額は、eMAXIS SlimオールカントリーとeMAXIS Slim S&P500のワンツーフィニッシュ。

元々純資産額が圧倒的であったところに、さらに資金流入が集中したことになります。

最安値ではないものの十分に低い信託報酬、長年築いてきたファンドの信頼性、そして圧倒的な純資産額、非の打ち所がないですね。

取り扱う証券会社も多岐にわたりますし、これからもeMAXIS Slim S&P500の優位は揺るがないでしょう。

であるがゆえに、やはりこれ以上の信託報酬値下げは無いような気がします。

私はつみたてNISAでは、ずっとeMAXIS Slim S&P500を積立投資してきましたし、eMAXIS Slim S&P500が信託報酬低コストのフラッグシップであった時代を忘れていません。

現在も、つみたてNISAでeMAXIS Slim S&P500を運用継続中の投資家は多いはずです。

つみたてNISAは、2024年以降、もう銘柄変更できませんし、信託報酬は長期にわたって払い続けることになります。

今回の予想はいい方向に外れて、eMAXIS Slim S&P500が信託報酬を0.077%以下に下げてくれることを期待しています。

そのためにも、楽天・S&P500には、eMAXIS Slim S&P500とって無視できない強力なライバルに成長して欲しいですね。

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