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USA360とは
USA360とは、楽天・米国レバレッジバランス・ファンドの愛称で、米国株式(VTI)と米国債券(5年国債と10年国債)を1:3の割合で保有するバランス型ファンドです。
一般的にバランス型ファンド、それも債券を含むとなると「守り」のファンドが多いのですが、USA360は投資額の90%を米国株式(VTI)、残り10%を米国債券先物取引で27倍にして270%を米国債券、合計360%とする積極的な運用を行うファンドです。
27倍レバレッジ(レバレッジとは値動きを大きくする仕組み)、いくら債券とはいえすごいですね。
ポートフォリオに債券も組み入れたいと思いながらも、資産形成期は期待リターンの大きい株式の方が魅力的で、債券には相対的に魅力を感じないケースも多いでしょうが、USA360なら債券にレバレッジを掛けてくれるので、少額で十分な債券(先物)を購入できそうです。
少額購入して値動き検証:株式と債券の組み合わせによるポートフォリオ安定化に期待
一般的に、債券の値動きは株式に比べて穏やかであること、さらに株式と債券の値動きは逆相関の傾向にあることから、債券はポートフォリオ全体の安定に寄与するものと認識していました。
確かに過去の値動きを調べてみると、コロナショックの時には、株式の暴落を債券が緩和しており、株式と債券の組み合わせが、ポートフォリオ全体の安定化に見事機能していました。
債券にレバレッジを掛けているUSA360が、レバレッジ無しの通常の債券ファンドのような値動きをしてくれるのなら、少額のUSA360で株式メインのポートフォリオを安定化させてくれるのではないかと期待して、実験的に少額購入して値動きを検証してみました。
なお、参考のため通常の債券ファンドとしてeMAXIS Slim先進国債券インデックスも購入しました。
検証結果:利上げショック時には株式とUSA360は共倒れでした
検証期間は2021年12月~2023年12月の2年間。
米国の利上げショックで株式も債券も下落局面に入り、下落相場のまま1年間を経て、ようやく利上げ停止予測から上昇局面に戻るという、極めて値動きの大きい期間でした。
検証結果はグラフのとおりです。
2022年の米国利上げショックで30%強も下落し、株式とUSA360は同相関で共倒れとなります。
その後、利上げ停止予測から上昇局面に戻っても、USA360の評価金額は回復が遅く、結局元本割れのまま検証期間を終了しました。
eMAXIS Slim先進国債券インデックスは株式やUSA360よりも穏やかな値動きで、下落も上昇もありましたが、最終的には黒字まで回復しました。
株式と逆相関にはなりませんでしたが、値動きの穏やかさをもってポートフォリオ全体の安定化に寄与したと思います。
レバレッジファンド特有の逓減リスク
USA360が同じ債券ファンドであるeMAXIS Slim先進国債券インデックスと異なる値動きをした原因として、レバレッジファンド特有の逓減リスクが考えられます。
レバレッジ効果で強まった下落と逓減リスクによる下落のダブルパンチで評価金額が下がりすぎてしまい、その後の上昇局面で、下がりすぎた評価金額にレバレッジを掛け続けても上昇率には限界がありました。
このため、下落幅が相対的に小さかったeMAXIS Slim先進国債券インデックスの方が、評価金額の戻りが速いという結果になりました。
もちろん、検証期間が2年間ではなくもっと長ければUSA360の上昇力がeMAXIS Slim先進国債券インデックスを上回る場面があったかもしれません。
しかし、2年間にわたってeMAXIS Slim先進国債券インデックスをアンダーパフォームしたのは事実ですし、この間の年利はマイナスです。
USA360の評価は投資目的によって異なるでしょうが、当ブログでは退職金運用で安定して4%定率取崩しすることを目標としているので、レバナス同様に下落からの回復に要する期間の長いUSA360はちょっと厳しいと感じました。
米国の利下げ局面でUSA360にチャンス到来?
2024年以降、米国は現在の高止まりした金利を、中立金利まで段階的に利下げするとの観測もあります。
金利が下がれば、一般的に債券価格は上昇するので、金利が高止まりしている時は、米国債券とって絶好の買い場なのかもしれません。
もしそうなれば、米国債券に27倍レバレッジをかけたUSA360は、魅力的な投資先になりますね。
同じように考える方が多いのか、基準価格が低迷していた2023年、USA360の純資産額がじわじわと増えていることが下図からわかります。
2023年は、結局米国の利下げはありませんでしたが、近いうちに利下げがあるのではないかと期待された1年間でしたからね。
最近は、基準価格も少しずつ上昇しています。
これは、USA360に組み入れられている米国株式(VTI)の上昇率の寄与が大きいと思われますが、債券「先物」であるだけに、現物債券の値動きとは異なるかもしれませんね。
米国のインフレ抑制等が順調であれば、今後3年程度にわたって利下げを続け、中立金利(金利=インフレ率)に至るという観測が多いようですので、ここ数年低迷していたUSA360 にチャンスが到来する場面があるかもしれません。